先生がいてくれるなら①【完】
……車の運転、上手いな。
なんて、つい余計なことを考えていたら、家の前だった。
「あ、ここです。ありがとうございました……」
お礼を言いながらぺこりと小さく頭を下げ、シートベルトを外そうとした時。
先生が私の手を掴んでそれを制止した。
驚いたのと、その手がとても冷たかったのとで、私は反射的に藤野先生の方を見た。
「今日の事、学校で誰にも言うなよ」
「えっ?」
「この格好。いろいろ面倒だから」
あぁ。なるほど。
確かに、こんなイケメンで素敵な男性が教師とか、イケメン好きな女子生徒たちが放っておくわけがないもんね。
「……分かりました」
じゃあなんで私にはバラしたの? と聞きたかったけど、先生の冷たい手に触れられて不覚にもドキドキしすぎて何も言えず、私はうんうんと頷くしかなかった。