先生がいてくれるなら①【完】
立花が何を言いたかったのかもちろん気付いていたけど、ちょっと意地悪したくなって、俺は立花の手の平を親指でスルッと優しく撫でた。
「~~~~っ!」
抗議する立花が可愛くてつい笑うと、顔を真っ赤にして困ったような顔で睨まれた。
──そう言う顔、他の男に見せたりするなよ?
もう一度「なに?」と問うと、立花は急に立ち止まって、絡めていた指を離そうとして手を引いた。
こらこら、何を離そうとしているのかな?
ちゃんと言いたい事を言ってからじゃないと、許してあげられないなぁ。
今度は離れないようにしっかりと指を絡め取る。
「なに? 何か言いたい事があるんだろ?」
そう問いかけても「何もない」と言い張るので、さっきと同じように立花の柔らかい手の平を親指で何度か撫でると、真っ赤になった顔を隠すために帽子を目深に被って俯いてしまう。
ちゃんと言いたいことは言おうな?
そしたらやめてあげるのに。
──多分。