先生がいてくれるなら①【完】
夏休みも佳境に入った8月の半ば過ぎの、土曜の午後。
いつものように部室の掃除を終え、夏休みに出された課題をこれまたいつものように一人で黙々とこなしていたその時──。
この部室の隣の、数学準備室の扉が開く音が聞こえた。
どくん、と鳴る私の心臓──。
「課題、はかどってる?」
藤野先生が部室に入って来た。
「あ、はい、まあまあです」
私がそう答えると、先生は私の真後ろに立ち、机に広げているノートを覗き込む。