先生がいてくれるなら①【完】
「はいはいはーーーい!!!」
隣の席の、倉林悠斗(くらばやし ゆうと)が私の手を取って、高く掲げた。
そして、その手をもぞもぞと動かし、指を絡めるようにしてしっかりと握り直す。
……って、ちょっと待って。
これって俗に言う、恋人繋ぎって言うやつでは……?
「数学係の、倉林と立花でーす!」
倉林君が元気に答える。
「ちょっと、倉林君っっ!」
私は小声で抗議するが、倉林君は聞こえなかったかのように繋いだ手を上げたままニコニコと笑っている。
一斉に、クラスの女子全員(美夜ちゃんを除く)が私を睨んだ気がする……。
いや、気のせいでは無い、なんか周りの女子からの無言の圧力がスゴイ……。
「……数学係は、昼休みに数学準備室に追加の教材を取りに来るように」
藤野先生はそう言って、さっさと教室から出て行ってしまった。
「って、ちょっと、倉林君、先生に変に思われたじゃない~」
「あはは、別にいいじゃん。インパクト強い方が覚えてもらえるし」
「変に覚えられて成績下がったら、倉林君のせいだからね?」
「大丈夫、俺、数学得意だから分かんない所は手取り足取り教えてあげるよ?」
そうだった。
倉林君は、見た目はチャラいけど、なぜか数学を始めどの教科も成績が良くて、所属するサッカー部でも一年からレギュラーで、先輩からも後輩からも人気があって。
だけど、極めつけはそのルックス。
もし校内イケメンコンテストなんてあったら、絶対1位になる事間違いなしなのだ。
私は一年生の時も倉林君と同じクラスだったから、彼の人気っぷりは日常的に見てきた。
倉林君を一目見ようと押しかける女子の数たるや、それはもう……。
性格も明るくて誰とでも仲良く話すから、男子全員と仲が良いと言う感じだし。
クラスの女子全員を敵に回して、私はこの先大丈夫なんだろうか──。