先生がいてくれるなら①【完】
先生の手が離れたので私はシートベルトを外し、もう一度お礼を言う。
「どういたしまして。ちゃんと課題やれよ」
「あっ……!」
「……忘れてたな? 数学の課題、忘れたらお仕置きな」
片方の口角をあげて笑う先生。
「じゃあな。おやすみ」
「は、はい、ありがとうございました、おやすみなさいっ」
ぺこりと頭を下げて私は車から離れ、扉の鍵を開け……家の中に入る前に、まだ止まったままの先生の車の方に向かって、もう一度頭を下げて中へ入った。
私が家のドアを閉めると、ようやく車が発進する音が聞こえた──。