先生がいてくれるなら①【完】

夏祭りの会場がある駅に着くと、改札の向こうはとても人が多くて、私はうっかり人波に流されてしまいそうになる。


それに気づいた先生が、私の手首を掴んで引き戻した。


「まったく、世話が焼けるな」


先生が私の手をしっかりと握る。


繋がれた手から先生の体温が広がって、心臓が大きく波打った。


少し俯いたまま先生の方をうかがうと、少し口角を上げて微笑んで私を見ている先生と目が合い、恥ずかしくて思わず目を逸らすと、先生は繋いだ手を指と指が絡み合うように繋ぎ直す。


こ、恋人繋ぎ……。

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