先生がいてくれるなら①【完】
待ち合わせ場所として指定した電車を待っている間にホームを見渡すと、浴衣を着た女子高生もちらほら見受けられた。
うちの高校のやつらはたまたま見かけないが……やはりどこか落ち着かない気持ちになる。
俺でさえそうなのだから、立花はもっとそわそわしてるんだろうなぁ、なんて想像すると、思わず口元が緩みそうになって、慌てて頬と口元に力を入れ直す。
滑るようにしてホームに入ってきた電車の扉が開いた。
探すまでも無く、すぐに立花の姿が目に入る。
もちろん他にもたくさん、女子高生やら女子中学生やら恐らく女子大生なんかもわんさか浴衣姿で電車に乗っているわけだが、そんなどうでもいい奴らなんか俺の目に入るわけもなく。
濃紺の生地に控えめな紫陽花の柄が、立花の白い肌を一層引き立たせていた。
いや、これは可愛すぎるだろ……。
浴衣を着るように言っておいて正解だった。大正解だった。
そんな本心を悟られないようにもう一度口元にキュッと力を入れて「ちゃんと間違わずに乗れたな、エライエライ」と立花の頭を撫でて、とりあえずいつも通り子供扱いをしておいた。
──そうでもしなきゃ、俺の心が今すぐ暴走しそうだから。