先生がいてくれるなら①【完】
「──先生、ひとつ聞いても良いですか?」
私は、先日から気になっていた事を思い切って聞いてみることにした。
「それは質問の内容にもよるよね」
はい、ですよね。
「えっとですね、昨日病院でお会いしたじゃないですか。その……どんな用事で病院にいたのかなって思って……」
先生は少し何かを考えているようだった。
小さく息を吐いて、言葉を選ぶようにゆっくりと話し出す。
「……弟がね、あの大学病院で研修医をやってて。忙しくて滅多に帰れないから、着替えを頼まれたりするんだよね」
「先生の弟さん、お医者様なんですか? すごいですね」
「まだ研修医だよ。ちなみに俺達の父親、あの病院の教授」
「わぁっ、エリート家系……」
──ん?
ちょっと待って、なんか今の先生の言葉、何か違和感があった気がするのは、気のせい?