先生がいてくれるなら①【完】

バケツの水を捨てて部室に戻ってと来ると隣の数学準備室の扉が開いていて、藤野先生が壁にもたれ腕を組んで立っていた。


「あ。おはようございます」

「おはよう」

「部室の掃除、終わりました」

「ん。ご苦労様。手を洗ったら準備室に来て」

「はーい」


手を洗って、部室に置いていた鞄を持って準備室の扉をノックする。


「どうぞ」

「失礼します」

「扉、締めて」

「はーい」


扉を閉めながら、あぁ、またこの香り──コーヒーの良い香り。


「はいどうぞ」


先生が私にコーヒーのカップを差し出した。


「え、良いんですか?」

「綺麗に掃除してくれたご褒美。……いらなかったか?」

「いります、いります! いただきます!」


私は慌てて先生の手からカップを受け取って、近くの椅子に腰掛けた。


「う~ん、良い香り! いただきま~す」


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