先生がいてくれるなら①【完】
「あれっ、感じちゃった?」
なんて、しれっと言って笑ってる。
「ちちち、ちがっ……!」
「ね、明莉も、俺のこと悠斗って呼んでよ」
「……えっ、む、無理っ!」
「えーっ、いいじゃん。ほら、悠斗って呼んでみ?」
「やだっ」
「……明莉」
もう一度、わざと耳元で囁く倉林君。
「ちょっ……、分かったから、離してっ」
「だーめ。“悠斗” って呼んでくれたら離してあげる」
倉林君は私の事を今度は正面からギュッと抱きしめて、また耳元に顔を近づける。
「あ、か、り……」
「っ、ちょっと、待って……!」
いくら昼休みの特別教室棟はひとけが無いからって、さすがにこんな所を見られるのはマズい。
特に倉林君のファンの女の子達に見られたりしたら、とんでもない事になりそうだ。