先生がいてくれるなら①【完】
数研の活動の無い日は、お兄ちゃんが入院する病院に着替えを持って行くことにした。
本当は毎日行きたいけど毎日だとお兄ちゃんも疲れちゃうし、部活に来いって言う藤野先生の命令に逆らう事も出来ないし。
私はなるべくお兄ちゃんを疲れさせないように、学校での出来事なんかを……一部捏造して報告した。
捏造している出来事と言えば、もちろん藤野先生との一件なんだけど。
お兄ちゃんは「明莉が楽しそうで、嬉しい」なんて言ってくれる。
そのたびに私は、捏造しなくても良い日常を送りたい、と心から思ったりする。
外もすっかり暗くなったので、私はお兄ちゃんに手を振って、病室を後にした。
私が来てる時は笑ってるけど……無理してるんだろうなぁ。
お兄ちゃんの顔色は相変わらず悪いままだったし、今日は食事も結構残してた。
私は暗い気持ちでエレベーターのボタンを押した。