先生がいてくれるなら①【完】
「1階ですよ。お先にどうぞ」
「あ、すみません、ありがとうございます」
その人は私がエレベータを降りたのを確認した後自らも降り、優しく微笑んで私を見つめた。
「さきほどの話ですけど。確かに僕の兄は、星城高校の教師をしていますね」
「じゃあ、やっぱり、先生の腹違いの弟さんって……」
そこまで言って、私は “腹違いの” の部分が余分だった事に気がつき、言葉を切った。
「──兄が、その話をあなたにしたんですか?」
とても驚いた表情で私に尋ねる。
私は気まずい表情で頷くと、その人は再び優しく微笑んだ。
「えっと、立花さんでしたっけ。ちょっとだけお話する時間はありますか?」
「は、はい、ちょっとだけなら」
「あぁ、その前にちょっと一本だけ電話をかけさせてね」
そう言ってどこかに電話をかけ、一言二言だけの短い用件で電話を切った。