先生がいてくれるなら①【完】

光貴先生は自販機でコーヒーを買い、ロビー脇の椅子に腰掛けるよう私にすすめた。


「そっかぁ、兄さんが僕のことを話したか。ふーん、そう、そうなんだね……」


「あっ、あのっ、すみません、聞かない方がいい話だったなら、その……今からでも聞かなかった事に……」


私が慌ててそう言うと、光貴先生はクスクスと笑った。


「立花さんはおもしろい人だね、ふふふ、でももう聞かなかった事には出来ないから、ね?」




あうぅ、そうです、もう無理です……。


なんたる失態──。



「大丈夫ですよ、別に秘密にしているわけじゃないですからね。ただ、兄さんがそれを人に言うのは本当に珍しい事なので、少し驚いただけです」


「そ、そうですか……」

「立花さんは、この病院にどなたかお知り合いが入院されてるんですか?」

「あ、はい、兄が……。あと、母が小児病棟で看護師をしています」

「そうでしたか。お兄さん、良くなるといいですね」

「はい、ありがとうございます」


光貴先生は優しく微笑んでくれた。



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