先生がいてくれるなら①【完】
先生は、車の中でちょっと──いや、かなり不機嫌そうだった。
「光貴と何を話した?」
「え? いえ、特にたいした事は……」
「……光貴に借りを作ったのはお前のせいだから、何か責任を取ってもらわないとなぁ」
「は? 待って下さい、私は別に何も……」
「光貴が俺に電話して来なかったら、お前またバスで帰ったんだろ、こんな時間に」
「それはまぁ、それしか方法が無いですから……」
先生は、はぁ、と大きなため息をついた。
「病院に遅くまで居すぎ。もっと早く帰れ」
先生は、前を見たままそう言った。
先生はそう言うけど……私は少しでも長くお兄ちゃんと一緒にいたい。
こればっかりは譲れない。