先生がいてくれるなら①【完】
俺は生まれつき虹彩の色が灰色がちで、これは俺の産みの母親譲り、らしい。
小さい頃から周りの人に色々言われて注目されてきたおかげで、この瞳の色には心底嫌気がさしていた。
立花はそんな俺の瞳を、何の遠慮もなくじっと覗き込んで来る。
いや、近い。
近すぎるから。
「だって……先生、綺麗すぎ……」
「嬉しくない」
「えっ、待って、ゆらゆらしてる……」
そう言って、もっと身を乗り出して俺の顔にグッと近づく。
もう少しで鼻と鼻がぶつかりそう……となって、俺は両手で立花の肩を押さえて押し戻した。
「……お前、もうホントに帰ってくれる?」
なるべく冷静を装って低い声で言ったけど、立花の恐ろしい破壊力の爆弾投下に、俺の心臓が驚くべき速度で鼓動した。
いやいやいや、なんでここで俺がドキドキしなきゃなんねーの?
おかしいだろ。
はぁ……。
もう、ホント、こいつ何なの──?
俺の平穏な教師生活を返せ……。