先生がいてくれるなら①【完】
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仕事を終えて帰宅しシャワーを浴びてリビングへ戻ると、携帯が鳴った。
着信音から、弟の光貴がかけてきたのだと分かる。
「もしもし、どうした?」
あいつの着替えを持って行ったのは昨日だしな、と逡巡する。
『兄さん、悪いんだけど、いますぐ病院まで来て。出来るだけ急ぎでね。ロビーで待ってるから』
「何かあったのか?」
『うん、まぁ。とにかく早めに来て』
「……わかった」
通話を切って戸締まりを確認し、車のキーを掴んで部屋を出た。
車を運転しながら何があったのだろうと色々想像してみたけど、どれもしっくり来ず……まあ、行けば分かるか。
俺は考えるのを諦めてとにかく病院へ車を走らせた。
駐車場では無く車寄せに車を停めて、急いでロビーへ向かう。
ロビーの片隅に自販機のコーナーがあり、そのすぐ側の椅子に光貴と、もう一人誰かが座って話をしているのが見えた。
──は?
見覚えのありすぎる人物に、俺は一瞬目眩がした。