Lunatic
反論したくとも、言葉が出てこない。
なにを言えばいいのか、二人ともわからなかった。


「千葉が木陰で休んでいたのを、人を殺して気分が悪くなったから、と考える奴がいるかもしれない」
「あ、あれは、倉庫内で音がして、誰かいたのかも、とか、もしかして呪われたのかも、とか思って、気分が悪くなったんだ……!」


千葉は途切れ途切れに、そして必死に言った。
そんな千葉に、瀬畑は優しく微笑んだ。


「わかってる。噂を信じてない奴らが思っているかもしれない、という可能性の話」
「そんな……」


千葉は安心するどころか、余計不安になった。
しかしただ漠然とどうしようと思うだけで、なにも考えられていなかった。


「瀬畑!」


そのとき、小河が教頭と一人の女子生徒を連れて戻ってきた。
教頭はまっすぐ体育倉庫に走っていく。


「宮村先生!?」
「入らないでください!」


瀬畑の大声に驚き、教頭は肩をびくつかせる。


「こんな不気味な場所に宮村先生を置いておけとでも言うの!?」


教頭は瀬畑を睨みつける。


「現場保存ってやつですよ。荒らしてはいけません。まあ、教頭先生が犯人扱いされたいって言うなら、遺体や凶器を触っても構いませんが」


瀬畑に言われ、教頭は体育倉庫から離れる。
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