Lunatic
教頭が大人しくなったことを確認すると、瀬畑は小河に近付く。


「早かったな」


アリバイがない人たちを連れてこいと言ったからもっと時間がかかると思っていた瀬畑は、素直に驚いた。


「教頭と宮村先生以外は職員室にいるか授業してて、五時間目サボってたのは、一人しかいなかったみたいなんだ」


小河は後ろにいる女子生徒を盗み見る。
それにつられるように、瀬畑も女子生徒のほうを向く。


「笹崎咲(えみ)……？」


瀬畑が彼女の名前を口にすると、瞼に隠れていた咲の大きな瞳が瀬畑を捉えた。


学年一美人と言われている咲と目が合い、瀬畑はドキッとした。


咲は目尻を落とし、小さく口角を上げる。


廊下ですれ違う際にその笑みを見せられたら頬を赤くしただろうが、なぜか今はその笑顔を見て、背筋が凍った。


「……あんたが……宮村を殺したのか……？」


まさかの発言に、その場の全員が耳を疑った。


咲も目を大きく見開いている。


「せ、瀬畑……自分がなにを言っているのか、わかってる……？」


小河は声を震わせながら尋ねる。


「……証拠もなにもないが……そんな気がしたんだ」
「勘で変なこと言わないでよ。違ったらどうするの？」


小河は咲を庇うようなことを言っていたら、咲のクスクスという笑い声が二人の耳に届いた。
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