俺のボディガードは陰陽師。~第四幕・夜に抗う~

「うん。終わったら連絡ちょうだい?最上階のラウンジ、良い夜景だと思う」

「行けるかわかんねえぞ?」

「大丈夫。勝手に待ってるから。無理かなと思ったら勝手に帰るし」

「…美味い酒飲みたいから、戻ってきたいんだけど。じゃ、頼むわ」

「うん」



そうして、兄貴が手を振って見送る中、竜堂はカフェから出て行った。

と、思ったら。

「あ…」と、立ち止まって振り返る。



「あ、弟よ」



…え?俺?



突然、声をかけられて戸惑いのあまりポカーンとする。

しかし、返事もしてないのにこの男は、その言葉の続きを俺に伝えた。



「会場でパーティー楽しんどけよ!」

「は…」



それだけを告げて、再び背中を見せて去ってしまった。



は…どういう意味?

パーティー楽しんどけって?

俺、そんなの全然好きじゃねぇ。楽しめねぇ。

っつーか、俺はおまえの弟じゃねえし。

弟よって、何を昔の歌人の作品みたいなセリフ吐いてる。

何なのアイツ。



首を傾げてみる。

しかし、それが竜堂からの隠された忠告だとは、この時は思いもしなかったのだった。



事はもう、すでに始まっていた。






< 193 / 528 >

この作品をシェア

pagetop