俺のボディガードは陰陽師。~第四幕・夜に抗う~
「…じゃあ」
すると、彼はまた翼をバサバサとはためかせ、後方へ移動し宝石から距離を取った。
握った拳をそっと開くと、掌には大きいサイズの硬く黒々とした、カラスの羽根そのものが現れる。
その羽根を手に取り、呼び掛けるように呟いた。
「侵し壊せ…魔毒、『夢魔』」
彼の声に反応して、カラスの羽根は自身に黒曜の光を灯し始める。
そして、それを宝石に向かって、ダーツの矢のように投げつけた。
空気を切り裂くかのように唸らせて、鋭く尖がった羽軸の先端が、未だ青緑色の光を放つ宝石を狙う。
だが、またしても攻撃を阻む金属音が辺りに鳴り響いた。
あまりの音の大きさに、黙って事の状況を見守っていたけれどそれでも再び肩を震わせてしまう。
しかし…あり得ない状況が起こっていることに、目を見張る。
(結界に、羽根が…?)
放たれた矢のようにモニュメントのてっぺんにある宝石を襲ったカラスの羽根だったが。
先の鋭く尖がった羽軸は、宝石の方を向いたまま、ショーケースのような結界に刺さっている状態だった。