俺のボディガードは陰陽師。~第四幕・夜に抗う~
何のダメージも受けてないと思われる兄貴は、麗華さんを腕の中に抱き留めたまま「うーん」と首を傾げていた。
麗華さんも兄貴の腕の中で、不思議そうに辺りをキョロキョロ見回している。
何も変わらず無事だとわかったら、「…離れなさい!」と、兄貴をどついて怒っていた。
「えー。もう離れちゃうのー」
「…当たり前です!いやらしい!」
「わはは」
すると、兄貴は自分のジャケットを脱いで、麗華さんの肩にかける。
「寒いでしょ?体冷たかった」
「………」
あんな命の危機に晒されたにも関わらず、二人は通常運転となっている。
引き続き呆然と眺めていたが…この男は違った。
「…『夢殿』の加護?」
そう呟きながら、俺の方をチラリと見る。
ニュートラルな笑みが一瞬、崩れたような気がしてゾッとさせられた。
しかし、視線はすぐに離れて、彼は再び兄貴の方に目をやる。
「…ねえ、あんた」
「ん?」
黒い翼の彼は、笑みを崩すことなく、兄貴に問いかける。