俺のボディガードは陰陽師。~第四幕・夜に抗う~
「…あ、君も寒いとか?そんなタンクトップ一枚だもんね。ごめん、ジャケット一枚しかないんだ。愛しい麗華を優先させて?」
「…あんたも、『橘』の人間なの?」
彼の予測もつかない質問に、兄貴も「え?」と、首を傾げる。
「え?うん、橘ですよ。そこにいる弟の兄」
そう言って、兄貴は俺を指差していた。
「………」
その返答に、彼は俺と兄貴をそれぞれチラリと見た後、表情崩すことなく黙り込む。
「…技の選択を間違えたみたい。僕としたことが」
ボソッと呟いて、クスッと笑っていた。
しかし、更なる次の一手は、間もなく。
彼の右手の動きを、なずなは見逃さなかった。
「…次来るぞ!…今度こそは本当に逃げろ!」
そこらに立ち尽くす俺たちに向かって、なずなは叫び掛ける。
『逃げろ』その一言を。
…しかし、大人しく「はい、そうですか」と言うことを聞いていられる状況ではない。
なずなが。
一人、不動縛だかのせいで動けず蹲ったままでいるんだ。
ケガもしている。
…そんななずなを置いて、逃げられるワケがない。