俺のボディガードは陰陽師。~第四幕・夜に抗う~
彼女はその歩みをまた、一歩進める。
散る火花が増大して、グッと押し返していた。
「…傷付けられたら傷付け返す、それじゃ憎しみが終わらない」
あわあわと狼狽えてばかりの表情、今は跡形もなく…凛としている。
「傷付けられたら、その苦しみ悲しみ糧にして…傷付いた人を、自分と同じ思いをした人を助ける、じゃないんですか?そう出来る人が『強い』んじゃないんですかっ?!」
「…うるさいっ!」
お互い更に踏み込み、ぶつかり合っている結界は捩れて変形してきている。
壁と壁の境から、ブォンと風が生じていた。
「『人間だから』じゃない!心を傷付けるのは、貴方達も変わらない。『たかが人間ひとり』を失って、何人もの人が悲しんでいたと思いますか?」
「僕に説教?…いい度胸だよ!」
「あなたがナーガさんを失って悲しんでいるように、あなた達が手をかけた『たかが人間ひとり』を失って、傷付いて悲しんでいる人がたくさんいたんですよ?あなた達だって、人の心をズタズタに傷付ける人間と変わらない」