俺のボディガードは陰陽師。~第四幕・夜に抗う~
壁の間の風は、徐々にうねりをあげて大きくなっていく。
「その上、命まで取るなんて…その方がタチが悪いじゃないですかぁっ!」
「…この憎しみを内に秘めておけるワケがないだろう!」
結界の境で獰猛に吹き荒れる風は、その中にも衝撃を伝えている。
双方同じタイミングで体を揺らす。
そんな様子を見かねて、なずなが声をあげた。
「…桃李ちゃん、陀羅尼!」
「う、うんっ、わわっ…」
ふんっ!と、腰を入れて踏ん張り、彼女は体勢を持ち直していた。
そして、目を瞑って口を尖らせてブツブツと独語を始める。
「…術者の真似事?相も変わらずナメたヤツだ」
その様子を彼は鼻で笑っていたが。
途端に彼女はピタッと静かになり、ゆっくりと目を開ける。
「…リグ・ヴェーダさんは、二年前のままですか?」
「…はぁ?」
「心が…『事変』が終わった二年前のあの時のままですか?…また『事変』を起こしたいって言ってるから」
「な、何が言いたいんだ!」
「世界はチクタクと音を鳴らして前に進んでるんです。…待ってくれない。何度だって置いていかれちゃう」