俺のボディガードは陰陽師。~第四幕・夜に抗う~
その向こうにいた、黒い翼の彼の方へとまっしぐらに向かっていき、一気に衝突していった。
しかし、向こうの反応も早く、衝突の直前に黒い羽根が風を起こし渦を巻いて舞う。
その風圧で僅かにスピードが緩んで、その隙に身を避けていた。
「…随分と激しい挨拶だよね?摩睺羅伽王の王太子、『羅伽蛇』の神童さん…?」
「これくらい激しくなきゃ、気付いて貰えないだろ?後ろでせっせと結界を張るだけの身ですから?」
お互い、不気味に薄ら笑いし合っている。
黒い翼の彼は、いつもの不気味な笑みを浮かべていて、いつの間にか通常運転の表情に戻っていた。
さっきのは何だったんだろう。
すると、眼鏡の男性はふと違う方向に目をやる。
その方向は…エメラルドの輝き。
夜空だけではなく、麓の俺たちをも照らすほど輝いている、パワーストーンの方だった。
浮き出た結界に、カラスの黒い羽根が刺さったままで、そこからビリビリと電光を放っている。
…残念な彼女の登場で、その存在を少し忘れていたわ。