俺のボディガードは陰陽師。~第四幕・夜に抗う~
「…桃李!今のうちに夏輝を動かして!」
「は、は、はいぃっ!」
…動かす?
そう要請された、美人なのに残念な彼女は。
「ふんっ!」と再び、膝曲げて腰を入れ、ガニ股で踏ん張っている。
そして…右の拳を天に突き上げた。
何でいちいちそのポーズ?
何?元気玉でも出すの?
横で竜堂が「…いつ見てもそのポーズ笑えるわ」と、苦笑いしている。
だが、その元気玉ポーズで。
「…かっ、『開印』…」
まさか、幻想的な光景が始まるとは。
握った拳からは、黄金の光がフワフワと漏れている。
それは、彼女の頭上にどんどん拡がっていく。
「…菖蒲色の音色・葡萄染の剣・鴇色の琴…司取りし神の加護を受けし、神童・神田桃李の名において命ずるっ…」
鼻息フーフー言ってる。
…いやいや。そんなことは問題ではない。
何かを感じて、ふと空を見上げる。
夜空の表情が少し変わったような気がしたのは、気のせいか。
「…出でよ、守護神…神童の神力を、従者に与えん…」