俺のボディガードは陰陽師。~第四幕・夜に抗う~
すると、もう一方で光が瞬き始める。
それは、竜堂の右手の指輪から。
「…お、来た」
次第に輝きの増す指輪を確認すると、竜堂はここから離れて前に出る。
黒い翼の彼が閉じ込められている、目の前の紫水晶の山を見据えて、腰を低く落として構える。
指輪の輝きを、更に放ちながら。
だが一方で、目の前の紫水晶の山はカタカタと震え始めていた。
まさか、ぶち破られる…?
あっちも、こっちも。
双方の様子を交互に見守る。
「…流麗に奏でよ…『楽天乾闥婆王』っ」
指輪の輝きが、光を一斉に放出する。
その眩しさは、辺りが見えなくなる程。
光の中に飛び込んでいくように、駆け出す竜堂の背中が見えた。
しかし、同時に地が震えて、ガラガラと岩が崩れる音がする。
それは次第にドン!と激しいものになっていく。
「…こんなんで足止めしたつもりかな?!」
黒い翼の彼の声だ。
ひょっとして、あの紫水晶の山から出てきたのか?!
すると、視界が開けて目の前の状況が明らかになる。
そこには、竜堂と黒い翼の彼がまさに、真っ正面から対峙する場面だった。