俺のボディガードは陰陽師。~第四幕・夜に抗う~
すると、耳元でフフッと笑う声が耳に入る。
「…君は、この国…いや、この世界を動かす力を持っている。唯一無二の能力を…ね?」
唯一無二の能力…?
この俺の?…どこにそんな!
《ね?…『夢殿』継承者の橘伶士くん?》
わからない。わからない…。
俺はいったい、『何者』なんだ…?
自分の正体は何なのか、理解出来ないこの状況、様々な疑問が頭を駆け巡る。
ぐるぐる回り過ぎて呆然としていたが。
その時、ふと。
フワリと頰に、風を感じた。
(…風?)
その方向に視線をやろうとするが、視界に思いっきり飛び込んでくる。
「…わっ!」
思わず目を瞑って伏せてしまうと、衝撃に突き飛ばされ、体がグラついてしまった。
何だ?!
目を開くと、そこには…。
「…もう、誰も傷付けない…」
真横には、彼を激しく睨みつける瞳。
左手でカラスの羽根を持つ手首を捻り上げて、右手で彼の胸ぐらを掴んで、後方へ押し付けていて。
彼は俺から手を離していた。
その横顔は、紛れもなく。
ヤツだった。
「…もう、誰もおまえに渡さない!リグ・ヴェーダ!」
「…なずなっ!」