俺のボディガードは陰陽師。~第四幕・夜に抗う~
(なずな…)
俺の腕には。
まだ、感触が残っている。
腕に抱いた時の、なずなの重みと身体の感触が。
そして、先程のことを思い浮かべる。
《総帥から指令を頂いてるんだよね?『次期音宮家当主として、夢見の最高峰、夢殿の侍衛を命ずる』…なんてさぁ?!》
すると、記憶の中からずるずると抱えた疑問が引っ張り出されていく。
《ね?…『夢殿』継承者の橘伶士くん?》
…それが、今回なずなを苦しめた、酷く手負いにさせた原因だと思うと。
疑念となって、胸の中に立ち込めていく。
俺は、いったい…。
「…菩提さん」
「ん?」
「なずなはまだ俺のボディガードをやってるんですか?…何故ですか?!」
「………」
「…俺はいったい、何者…なんですか」
そんな質問をする俺を、見開いた目で見ているが。
頷いているあたり、さほど驚いているわけでもないらしい。
「…わかった、そうだね。ビックリしただろうね?…何であのクソヤローに狙われているのかって」
しどろもどろになりながらも、深く頷き返す。
…そして、話が始まるのだった。
「…ちょっと、昔話をしようか」