俺のボディガードは陰陽師。~第四幕・夜に抗う~

「…しかし、君は。『夢の中です』と答えた」

「それが…何か?」

「有り得ないんだ。ヤツの姿を夢の中で確認すること、それを目が醒めていても覚えていることが。常人には絶対あり得ない」

「え…」



黒い翼の彼と、夢の中で出会うことは、あり得ないこと。

…どうやら、それが菩提さんの判断材料になったらしい。

俺が、『夢殿』の継承者であることの。



「リグ・ヴェーダの半人半魔契約の相手は…『黒翼』と呼ばれる黒い翼を持つ魔族。契約で手に入れた力は、その黒い翼の魔力と『夢渡り』の力だ」

「夢渡り?…さっき言っていた『夢殿』の?」

「ああ。夢の中、他人の精神世界に入り込み、記憶を操作し、思考を読み取って意識を操ったり、時には幻覚を見せることが出来る。…昨年の件で、伶士くんが無意識にあのホテルに向かってしまったのも、今回小笠原さんが屋上へ引き寄せられてしまったのも、恐らく、ヤツの『夢渡り』の暗示の力に依るものだ」

「え?」

昨年、鹿畑凛子さんの悪霊騒ぎで、自分の意思とは裏腹にパーティーの行われているホテルへと向かってしまった。

あれは、彼の暗示によるものだったのか?


< 417 / 528 >

この作品をシェア

pagetop