俺のボディガードは陰陽師。~第四幕・夜に抗う~
週末は、親父と剣軌か、鈴代のおばあさまのどちらかが必ず面会に来てくれていたし。
だから、寂しくなかった。頑張れた。
けど、ママは一度も会いに来てくれなかった。
総本山の修行を終えて、札幌に帰ると…ママはいなくなっていた。
親父と離婚して、フィリピンへ帰ってしまったという。
『大人には大人の事情がある。子供にはどうも出来ないことなんだ。だから、優さんを責めちゃいけない』
『絶対に泣くな。メアリに会いたいって間違っても優さんに言うな。堪えろ。全部堪えて強くなるしかないんだ』
わかってる。何となくわかってるよ。剣軌の言いたいこと。
どうもならない事情だったんだ。だから、ワガママ言って責めて親父を悲しませちゃいけない。
涙、悲しみ、弱さ、全て堪えてこそ、強さ。
そう信じて、何もかも堪えてここまで来た。
それが強さへ変わると信じて。
嬉しかったこと、悲しかったこと。
楽しかったこと、全て…今までの記憶が、どんどん過ぎって行く。
フィルムのコマ送りのように。
これは、走馬灯ってやつだろうか。
…あぁ、私。
もう…死ぬのかな。