俺のボディガードは陰陽師。~第四幕・夜に抗う~
『心地よい秋風が吹き抜ける秋天の候、御館様におかれましても、御壮健のことと存じます。…更なるご清祥を強くお祈り申し上げます』
…おぉぉ。さすが、総本山が手放したくなかった、一般の出なのに超エリート陰陽師。
ご口上もご立派だ。
すると、御館様は『ホホホ』と笑う。
『有難う御座います、剣軌。なずなも面を上げなさい』
『はい』
そろそろと顔を上げて、目の前の御館様を視界に入れる。
…うぉっ。やはり。妖怪ババアだ。
御歳90にして、その肌ツヤ、しゃんしゃんとした歩行。
真っ直ぐな背筋と、着物の着こなし。
未だ、正月には孫とひ孫に会いに、飛行機乗って北海道に来るんだぞ?
妖怪ババアの極みだ。
…だなんて思ってることバレたら、御館様ではなく先に剣軌に殺されそうだ。
『…さて、早速話に入りましょう。…剣軌、御報告有難う御座います。《マントラ》の最後の生き残り、リグ・ヴェーダが魔界から戻ってきたと』
やっぱり。剣軌はその事を総本山に報告していたんだな。
だとしたら、早急なる殲滅命令だろうか。