記憶シュレッダー
☆☆☆

学校から家までの帰り道で考えることといえば、毎日の晩御飯の献立だった。


「昨日ハンバーグにしたから、今日は魚にしようかな」


ブツブツと独り言を呟きながら歩く。


頭の中には冷蔵庫の中身がちゃんと入っていて、どの食材で何を作るのか想像することもできた。


祖父との2人暮らしのおかげで、あたしの料理の腕は中学生とは思えないほど伸びていた。


いつかこの特技を生かして浩太にお弁当を……なんて、淡い妄想も抱いている。


鼻歌まじりに玄関を開けて部屋の中へ入る。


祖父はすでに定年していて、時折シニア向けの仕事を斡旋してもらって働いている程度だった。


今日は家にいるはずだけれど、玄関を入って声をかけたときに返事がなかった。


「おじいちゃんただいまぁ?」


あたしは首をかしげつつリビングのドアを開けた。


その瞬間だった。
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