記憶シュレッダー
リビングの床に大きなものが横たわっているのがわかった。


顔が向こうを向いていて見えなかったから、一瞬それは人形かぬいぐるみかと思った。


だけど違うとすぐに気がつく。


ハッと息をのんで鞄を投げ出し、駆け寄る。


「お祖父ちゃん!?」


倒れた祖父の体を抱き起こすと、その体には全く力が入っていなかった。


ダラリと垂れ下がる両腕に心臓が早鐘を打ち始める。


「お祖父ちゃん!?」


いくら声をかけても返事はなく、目は固く閉ざされている。


「嘘でしょ……」


一瞬、頭の中は真っ白になった。


ほとんど記憶に残っていないはずの、両親の葬儀の時の光景がよみがえってくる。
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