記憶シュレッダー
そんな質問が喉元まで出かかったけれど、その前に担当医が病室へ入ってきた。


あたしを見ると軽く頭を下げ、そして祖父の様子を確認している。


「敦子、ちょっと……」


蒔絵に呼ばれて一旦病室の外へ出る。


お祖父ちゃんの顔が見えなくなって安堵するが、嫌な予感は加速していた。


「なに?」


「なにじゃないじゃん。お祖父ちゃん大丈夫だって言ったよね?」


キツイ口調の蒔絵にあたしは頷く。


確かに、入院してから容態は安定していると聞いていた。


だから今日も蒔絵と由香里をつれてきたのだから。


「まさか、お祖父ちゃんのことまでシュレッダーにかけたとか?」


そう言ってきたのは由香里だった。


あたしは驚愕に目を見開いた。


「なに言ってんの? そんなワケないじゃん!」


思わず声が大きくなってしまう。
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