記憶シュレッダー
「大川さん、どうしました?」


あたしの声をききつけた担当医が心配して駆け寄ってきた。


「なんでもないです。ちょっと、喧嘩しただけで……」


「あの、敦子のお祖父ちゃんの容態はずっと悪いんですか?」


あたしの言葉をさえぎるように由香里が言った。


あたしは唖然として由香里を見つめる。


すると担当医は急に真剣な表情になり「入院して3日目に、説明した通りです」と、あたしへ向けて言ったのだ。


「え……?」


担当医の言葉にあたしは全身からスッと血の気が引いて行くのを感じた。


今、なんて?


入院3日目に説明した?


一体なにを?


思い出そうとしても無理だった。
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