記憶シュレッダー
リサイクルショップでの商品との出会いはまさに一期一会だ。


いいなと感じても、次に来たときはもうないかもしれない。


ワシは週に1度か2度はこの店に通い、なにか掘り出し物がないか見て回るのが好きだった。


「背広姿でリサイクルショップに来るなんて、あんたくらいだよ」


店主はそう言って豪快な笑い声をあげる。


「そうなのか? 別に、珍しくもないと思っていたけど」


ワシは自分の格好を見て答える。


でも確かに、このリサイクルショップに訪れる人々は軽装が多いかもしれない。


仕事帰りにちょっと寄ろう。


なんて考えはあまりないのかも。


「あんた、仕事人間なんだなぁ」


「そうでもないよ。自分こそ、この店を切り盛りしてるじゃないか」


「俺のはほとんど趣味だよ。格好だってほら、古着で流れてきたもんを、適当に見繕ってきてるだけだ」


甚平姿の店主はそう言ってくるりと回って見せた。


ワシはそれを見て鼻で笑う。
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