記憶シュレッダー
☆☆☆

病院内は薄暗くて、どこか不気味な雰囲気が漂っていた。


どこからか聞こえてくる子供の泣き声。


職毒液の匂い。


カラカラと点滴を持って歩く音。


そのどれもが恐怖の対象だった。


手術室の前のベンチに座ったあたしはひとりでカタカタと震えていた。


お祖父ちゃんはどうなってしまうのか。


あたしはひとりになってしまうのか。


その恐怖がどうしても離れて行ってくれない。


「敦子ちゃん!」


廊下に響く声が聞こえてきて、息を飲んで顔をあげた。


見ると青ざめた顔の伯母さんが走ってやって来るところだった。


「伯母さん、どうして……?」
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