記憶シュレッダー
お祖父ちゃんがあたしの手を握りしめ、「敦子は、もう二度とあれを使うな」


「うん……わかってる」


頷くと、お祖父ちゃんの手があたしから離れていく。


その手はグッタリとベッドに落とされた。


「大丈夫!?」


慌てて酸素マスクを付ける。


しかし、お祖父ちゃんの表情は変わらない。


「お祖父ちゃん苦しいの? ちょっと待ってよ、すぐにお医者さんを呼ぶから」


あたしはナースコールに手を伸ばす。


看護師が到着する前にお祖父ちゃんは目を閉じていた。


「お祖父ちゃん聞こえてる? 目を開けて!」


懸命に声をかけるのもむなしく、お祖父ちゃんはもう二度と目を開けることはなかった。


まるで、あのシュレッダーについて話をしたから役目は終わったとでもいうように。


その日のうちに息を引き取ったのだった。
< 150 / 213 >

この作品をシェア

pagetop