記憶シュレッダー
☆☆☆

祖父の葬儀が行われている間も、あたしは信じられない気分でいっぱいだった。


お祖父ちゃんが死んだ。


ずっと一緒にいて、あたしを育ててくれていた人が死んだ。


その実感がいつまでも湧いてこない。


「敦子ちゃん大丈夫?」


声をかけてくれたのは伯母さんだった。


伯母さんはこの2日ほどで随分老けてしまったように感じられた。


「はい……」


あたしは小さな声で答えてうつむく。


きっと、あたしがお祖父ちゃんの死を実感するのはまだ後だろう。


その時自分がどうなってしまうのか、想像もできなかった。


お祖父ちゃんが倒れた時でも一人でいる心細さを感じたのに、今度は家に帰っても誰もいない日がずっとずっと続いて行くのだ。


それは想像もできない世界だった。
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