記憶シュレッダー
あたしはゴクリと唾をのみ込み、押入れの襖に手をかけた。


やめろ。


開けない方がいい。


見るな。


そんな声が聞こえてくるようだった。


だけど、見なきゃいけない。


どうしてあたしはあんなに手慣れていたのか。


その答えがここにあるはずだから……。


あたしは息を吸い込み、一気に襖を開けた。


その瞬間暗闇が広がる。


数秒置いて、刺激臭が漂ってきた。


それは書斎に充満しはじめている、あの臭いで間違いなかった。
< 175 / 213 >

この作品をシェア

pagetop