記憶シュレッダー
上の段になにもないとなると、答えは下の段にあることになる。


あたしはまた生唾を飲み込んでしゃがみ込んだ。


背を低くした瞬間刺激臭が強く感じられた。


思わず顔をしかめ、下の段を確認する。


大きなダンボールに、透明なカラーボックス。


カラーボックスの中には祖父が仕事で使っていた書類や本が入れられているのが見えた。


だとすると、問題は段ボールの中だ。


あたしはゆっくりと両手を伸ばしてダンボール箱に触れた。


その瞬間異様な温もりを感じて咄嗟に手を引っ込めてしまった。


今のぬくもりは一体何だろう?


まるで、この大きなダンボールの中に生きた人間が入っているような……。


そこまで考えて左右に首を振る。


あたしはそんなことまでしていないはずだ。


そう思い、ハッと息を飲んだ。
< 177 / 213 >

この作品をシェア

pagetop