記憶シュレッダー
☆☆☆

伯母さんの車で家に戻ってからも呆然としてしまって、うまく思考回路がまとまらなかった。


お世辞にも広いとは言えない家が、祖父がいないだけで随分と広く感じられる。


そしてなにより寒々しく、そして心細かった。


学校から戻るといつも笑顔で「おかえり」と言ってくれた祖父が、今はいないのだ。


そう思った瞬間、悲しさがこみ上げてきた。


手術室から出てきた祖父は色々な管をつながれ、機械と共に病室へと入っていった。


その姿を思い出すと、目の奥が熱くなり、鼻の奥がツンとして涙が滲んだ。


あたしは滲んできた涙を手の甲でぬぐうと、気を取り直すように大きく息を吸い込んだ。


祖父の容態はあたしが聞くだけじゃよくわからなかったけれど、どうやら血管の一部が裂けてしまったようだと、伯母さんが教えてくれた。
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