記憶シュレッダー
その場所が脳内だったため、事態は緊急を要したのだ。


だけど手術は無事に成功した。


後遺症が残るときもあるらしいけれど、それでもそこから回復した患者さんも数多くいると教えてくれた。


あたしはいい情報だけを思い出し、祖父の部屋の前まで移動してきた。


一階の角部屋にあるその部屋のドアをあたしは今まで1度も開けたことがなかった。


いつも優しくて美味しいコーヒーを入れてくれる祖父なのだが、この部屋に入ることだけはどうしても許してくれなかったのだ。


子供のころこっそり部屋に入ろうとしてひどく怒られた記憶があるため、あたしは祖父の部屋には決して近づかなくなった。


でも、今回は緊急事態だ。


お祖父ちゃんの入院道具を準備しなきゃいけない。


あたしは自分にそう言い聞かせてドアノブに手をかけた。
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