記憶シュレッダー
銀色のノブを回そうとして、一瞬手が止まる。


昔祖父から怒られた記憶がよみがえってくる。


決して入ってはいけないと言われたことも。


祖父は昔からこの部屋を書斎としても使っていて、仕事道具が多く置かれていることは知っていた。


だからあたしをよせつけたくはなかったのだと思う。


けれど、一瞬だけ嫌な予感が胸をよぎった。


このドアを開けて本当に大丈夫なの?


お祖父ちゃんからあれだけダメだと言われていたのに、入ってしまっていいの?


そんな自問自答を、どうにか頭の中から振り払った。


お祖父ちゃんの着替えはこの部屋にしかないんだから、仕方ないじゃん!


あたしは思い切って、ドアを開いたのだった……。
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