記憶シュレッダー
部屋の中はごく普通の書斎だった。


大きな本棚が壁一面に置かれていて、難しそうな経済書が沢山並べられている。


その中に一冊のアルバムを見つけてあたしは「あっ」と呟いて手を伸ばしていた。


開いてみると、それは幼少期のあたしが写っている写真ばかりが収められたものだった。


祖父がこのアルバムを大切にしていることは知っていた。


写真を少し見ただけで、胸がジンッと熱くなるのを感じてすぐに閉じた。


あたしの写真はほとんどが祖父が撮影してくれたものだ。


祖父が、どれだけあたしを大切にしてくれいていたのか、よくわかる。


「入院準備しなきゃ」


また溢れ出そうになった涙を押し込めて呟く。


タンスから下着やパジャマなど、すぐに必要そうなものを取り出して、旅行鞄に入れていく。


一体どのくらい入院することになるだろうか?


案外すぐに退院することが決まって、こんな大荷物必要じゃないかもしれない。


淡い期待を抱きながら準備を進めていた時だった。
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