記憶シュレッダー
お祖父ちゃんがいなくなってしまうなんて、あたしには考えられないことだった。


「そんなに沈んだ顔してたら、お祖父ちゃんが心配するよ!?」


蒔絵はそう言ってあたしの背中を叩いてくる。


でも、その目には涙が滲んでいた。


「あたしのこと、心配して泣いてくれてるの?」


「な、泣いてなんかないし!」


蒔絵は慌てて手の甲で涙をぬぐい、笑顔を見せた。


蒔絵は人一倍、友達のことを思いやれる子だ。


「明日は判定試験もあるし、大丈夫なの?」


由香里はまだ心配そうな顔をしている。


「あ、そういえばそうだっけ……」


明日は志望校に入学できるかどうかの判定試験がある。


試験結果はA~Eランクに分かれて判定され、D以下だと合格は難しいらしい。


ここ最近ずっと勉強してきていたのだけれど、昨日の出来事で試験のことをすっかり忘れてしまっていた。
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