記憶シュレッダー
「由香里、朝からお菓子ばっかり食べちゃダメじゃん」


「蒔絵がおいしそうなお菓子を持ってくるのが悪いんだよぉ!」


「ちょっと、人のお菓子食べておいて、なんで私が悪いことになってんの」


きゃあきゃあと教室内で騒ぐのはあたしたちの日課だ。


どれだけ嫌なニュースを聞いた後でも、3人で集まればたちまち笑顔になれる。


あたしはこの2人が大好きだった。


「なぁに騒いでんだよ?」


かしましい声を聞きつけたのか、サッカー部の林浩太(ハヤシ コウタ)があたしたちに近づいてきた。


その声を聞いた瞬間、胸がドキンッと大きく跳ねた。


浩太がこちらへ近づいてきたことはわかっているのに、顔を向けることができない。


「聞いてよ浩太。由香里ったらひどいんだよ~!」


蒔絵はあたしの気持ちに気がつくことなく、浩太へ向けて愚痴を開始した。


「なんだよお菓子くらいで騒ぐことないだろ?」


「そうだよね浩太~!」


「浩太は一体どっちの味方なの!?」


女子2人に挟まれたって浩太は涼しい顔をしている。
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