記憶シュレッダー
「どうしたんだよ敦子。今日はなんか静かじゃねぇ?」


浩太にそう聞かれて、あたしの心臓はまた大きく跳ねた。


「べ、別に普通だけど?」


そう言って笑顔を浮かべてみたけれど、きっとひきつっていたと思う。


その証拠に浩太はあたしを見て眉間にシワを寄せている。


そんなあたしを見て、ゆかりと蒔絵はニヤニヤと粘っこい笑みを浮かべている。


「おーい、浩太! こっち来いよ!」


「おぉ、今行く!」


浩太はあたしの胸のドキドキなんて知らず、友人に声をかけられてそそくさと行ってしまった。


その後ろ姿を見つめて、はぁ……と、大きく息を吐きだした。


「浩太が近くにくるだけでそんなに緊張してたら、バレバレだよ?」


ニヤついた笑みを浮かべたまま、由香里がそう言ってくる。


あたしは自分の頬を両手で包み込んだ。


少しだけ熱いかもしれない。


「でも、本人にはバレてないよね?」
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