記憶シュレッダー
「他の学校の人。塾が一緒なんだけど、勉強ができてカッコイイの」


そう言う由香里の頬は赤く染まっている。


由香里が塾に通い始めたのは6月に入ってからだから、つい最近知り合ったみたいだ。


「いいなぁ! 2人して好きな人いてー!」


蒔絵は1人面白くなさそうに頬を膨らませている。


「蒔絵は、彼氏の1人や2人くらいいるんだよね?」


あたしの問いかけに蒔絵は瞬きをして、それから「いるわけないじゃあん!!」と声を上げると空を仰いだ。


大袈裟なその様子に思わず笑ってしまう。


「蒔絵を好きな男子は沢山いるけど、蒔絵が相手を好きにならないんだもんね」


由香里の言葉に今度はうなだれている。


「だって、好きとかよくわかんないんだもん」


「胸がギュッと苦しくなるとか、その人のことをジッと見ちゃうとか」


あたしの言葉に蒔絵は首をかしげた。


本当にわからないみたいだ。
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